第48,49回講座「地形・地質学入門」

講師 岡崎浩子
開催場所 中央博物館
開催日時 2013年12月12日

テーマは、「房総半島の地質と地形」
千葉県立中央博物館にて

 残暑が残っていた10月10日以来の中央博物館での講座。街路樹の銀杏も半分以上の葉が落ち、まもなく殺風景な枯木に変わるが、隣接する青葉の森公園は彩に包まれていた。

岡崎浩子講師による「地質と地形」講義は、午前は講堂で、午後からは展示室に場所を移して行われた。午前の講義は半島の成り立ちについて。講義を聞いて、硬い岩石が少ないのは半島の形成が新しいためであることを知って納得、身近な谷津の自然についてはその成り立ちが判り一層親しみが湧いてきた。手繰り寄せてみると地質・地形もおもしろい。
午後の展示室での解説は、標本や写真があるので分かり易い。地震による液状化展示コーナーでは、講師は持参された材料を使って体験学習を指導された。地震による液状化が起こるメカニズムについての理解が深まる機会を与えてもらい参考になった。

体験学習を指導される岡崎浩子講師展示物前での解説

第48・49回講座 「地形・地質学入門」
講師  岡崎 浩子氏(千葉県立中央博物館 地学研究科長)
日時 12月12日(木)10:00~15:00
場所  千葉県立中央博物館大講堂及び展示室

房総半島の地形・地質の特徴

 千葉の自然景観や土台をつくる丘陵や台地・低地の成り立ちについて講義された。この大地は大きく分けると、南の房総丘陵(標高100m以上)と北の下総台地(100m以下)から成る。地質の違いから鴨川付近の嶺岡山地とそれより北の上総丘陵、南の安房丘陵に分ける場合もあるとか。地層のほとんどが約260万年から現在に至る新世代第四紀のものであり、大変新しい大地である。硬い岩石が少なく、泥や砂が固まってできた地層(堆積岩)なので古い時代の岩石が少ないのが特色である。

 房総半島の地質の成り立ちは、地域によってそれぞれ違う。プレート上の堆積物がはぎ取られ陸側に押し付けられて形成されたのが安房丘陵。深海底の泥と浅い海からの砂が交互に重なった層が陸化したのが上総丘陵。内海(古東京湾)であった地が地球全体の気候変動による海面水準の変化によって陸化したのが下総台地である。この台地には海底の堆積物の中にあった浅い海の貝の化石が含まれており、国の天然記念物に指定されている木下貝層はその例だという。又、至る所で見かける谷津や谷津田は、2億年前の最終氷期に東京湾が干上がり、河川による陸地の浸食で刻まれた谷に7000年前の縄文海進により泥や砂が堆積し、その後に、海水面の上昇で川から運ばれてきた砂や泥がその上に堆積し埋めたてられてできたものという。

房総半島の地形は、プレートの動きと氷期と間氷期に海水面が高くなったり低くなったりして形成された。房総半島の地質は、銚子を除き、南部の嶺岡山地(赤)が一番古く、次いで
清澄山地(緑)、安房丘陵(緑)が古い。
プレートの沈み込み。半島をのせた北米プレートの下に、フィリピンプレートと太平洋プレートが沈み込んでいる。
安房丘陵は、海洋プレート上の堆積物がはぎ取られて陸側に押し付けられてできた。プレート沈込みによりできた付加体の地下深いところから突き出た嶺岡山地。玄武岩やハンレイ岩、蛇紋岩で形成される。300~40万年前の上総海盆期には、嶺岡山地と三浦半島はつながって海面上にあった。下総台地の地層は、内海(古東京湾)の堆積物。台地に樹脂状に低地が入り込み、田んぼ(谷津田)が作られた。下総台地の地層は、10万年周期の海水準変化(氷河期と間氷河期)により陸と海の地層が繰り返している。下総台地の低地断面図。沖積層の2万年前(最終氷期)の谷が基底となり、縄文海進時の砂・泥が積り、その後に川からの砂・泥が重なってできた。
下総台地の特徴。40万年前から8万年前の砂層を主体とし、浅海や陸域の堆積物(関東ローム層の赤土)が地層をなす。10万年周期で起こっている氷期と間氷期。地球規模での気候変動に起因する。約2万年前(最終氷期)の頃の関東。海水面が下がり、陸が広がり東京湾が陸化した。大きな河が太平洋に注ぐ。
7000年前の頃(間氷期)の関東。縄文海進と呼ばれる時期。海水準が上昇し、内陸部に海が広がっている。日本列島の沖合につながる海溝。パネルを前に岡崎講師の解説を聞く。液状化現象の再現実験。コップに入れた水と目の粗い砂と細かい砂を撹拌した後に、コップを叩いてみると水を含んだ細かい砂が噴射した。
大地震によって引き起こされる海底の巨大な地滑りと土石流(タービダイド)。海底谷を流れ下る。東日本大震災でも発生した。海底のタービタイドの痕跡。上総層群の地層から泥と砂が交互に堆積した層がよく見られる。砂の層は海底を流れた土石流の痕跡。ナウマンゾウのレプリカの前で解説される岡崎講師。下総台地ではしばしば陸生の化石が出てくる。
地層に残されたメッセージ。300~500万年前の上総層群の海には、陸にすむゾウやシカなど動物の死体が流れ込んできた。下総台地の地層。地層によって密集した貝層が重なる。泥の層は温暖化し海が陸化したもの。下総台地から出土したナウマンゾウの化石。古東京湾が陸化した時代に房総にやってきていた。
解説される岡崎講師

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