第28,29回講座「川沼の自然入門、山の自然入門」

講師 倉西良一、原 正利
開催場所 中央博物館
開催日時 2013年9月12日

テーマは、「川沼の自然」・「山の自然」

第28回講座
講座名 川沼の自然入門
講師  倉西 良一氏(千葉県立中央博物館 環境教育研究科上席研究員)
日時  9月12日(木)10:00~12:00
場所  千葉県立中央博物館講堂・展示室

倉西 良一講師講義風景

今週は24節気の白露に当たり、草に降りた露が白く光る侯とされる。わずかではあるがその気配が感じられるようになったが、太平洋で高気圧が強まり暑さが又ぶり返している。25度を超す熱帯夜は依然として続いている。又、210日を過ぎたのに関東地方に未だ台風が襲来しないのも珍しいが、今日(9月14日)の予報では大型台風18号が関東を直撃しそうだ。

川や沼の環境構造とその生態系を構成する生物について

講師の倉西良一氏は、当博物館の開設準備から関わってこられた、水生昆虫学、河川生態学のスペシャリストである。
前半の1時間は、千葉県の川・沼に生息する水生昆虫について解説され、また、レッドデータブックに記載されたシャープゲンゴロウ等を例に絶滅危惧種について講義された。
後半は、展示室に移り、実際にカゲロウ、カワゲラ、トビゲラなどたくさんの標本を見ながら、興味深い解説を聞くことができた。


世界中で問題になっているミツバチの大量死。その原因の一つと疑われているネオニコチノイド系農薬がEUで使用禁止になった。このことを巡る波紋を取り上げた9月12日のNHK番組「クローズアップ現代」について、講師から言及があった。

第29回講座
講座名 山の自然入門
講師  原 正利氏(千葉県立中央博物館 海の博物館分館長)
日時  9月12日(木)13:00~15:00
場所  千葉県立中央博物館講堂・展示室

原 正利講師講師の解説を聞きながら、博物館の展示物に見入る。

山地形成についての講義と展示物(生物)の解説

 日本の高齢者人口が全人口の四分の一に達したと報じられた。高齢化する日本社会と似て、時間の単位は違うが、ゆっくりと高齢化?している山もある。高い地形が山でありこれは不動のものと思っていたが、山の地形は輪廻しているという。山には、誕生、幼年、壮年、老年期とその歴史が異なる山があり、風化など自然の影響を受け次第に老いていくと森林生態学が専門の原講師は説く。日本列島のいくつかの代表的な山についてその形成の原因を紹介され、次いで千葉県の山の特色を解説された。

 前半の1時間は講義。後半は博物館の展示物を解説された。房総半島の生物のコーナーに絞り、展示物の前で立ち止まりながら解説を加えていかれた。館内を回ってみる機会が多い筆者であるが、じっくりと観察してみて改めてこの博物館のすごさを知った。展示物の内容はもちろんであるが、展示方法、例えば、遠近感のある林間空間の演出、写真と思っていた里山の風景が実は描いた絵であった…。こうしたことを発見するのも楽しい。

山地形成の原因を説かれた。山地は隆起と浸食のバランスにより、その地形は輪廻しているという。例えば、阿武隈山地の山並みは準平原地形。この地形が古い歴史をもつ山であることの証拠となる。東北・北上山地の稜線部もなだらかな準平原地形である。
谷川岳の切り立った山並みは、壮年の山であることの証拠。北アルプスの山並みも、壮年期の山の特色をもつ。燕岳の山の頂上付近は、花崗岩が露出し、風化で白くなっている。
日本列島を垂直に切り取ってみた植生の分布。左に位置する鹿児島から、右に行くほど分布線は低くなっている。

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