第12・13回講座「川・沼の自然入門」

講師 大木淳一
開催場所 養老渓谷
開催日時 2012年6月14日

テーマは、「川・沼の自然入門」
養老渓谷でフィールド学習

講座名「川・沼の自然入門」 市原市養老渓谷にて
講師 大木淳一氏(県立中央博物館上席研究員)
内容 養老渓谷駅から梅が瀬渓谷まで歩行。10種類のカエルを見つけ、最後に源流の最奥に住む幻のタゴカエル(田子蛙)を発見。蛙を通して養老渓谷の自然環境とその生態を学んだ。


幻のカエル見つけた!!(梅ヶ瀬川の浅瀬にて)

養老渓谷に生息するカエルが語る川と沼の自然環境
本日の講座は、大木淳一講師による屋外講義「川・沼の自然入門」(午前・午後)。10時30分に小湊鉄道の養老渓谷駅に集合、専門は地質学だが「幻のカエル」の著者でもある大木氏から、千葉県に生息するカエルや両生類について簡単なレクチャーを駅前広場で受けて、駅から5キロの梅ヶ瀬渓谷に向った。歩きながら田圃や道筋の沼でカエルの鳴き声に耳を傾け、その姿を探した。田植えが終ったばかりの稲苗の間を動き廻る孵化したばかりのアオガエル、その小さな命の躍動が愛おしかった。

養老渓谷駅に集合大木淳一講師
     
秋には紅葉狩りに訪れる観光客で賑わう梅ヶ瀬渓谷だが、梅雨が近いこの季節に訪れる人の姿はほとんど見かけない。昼食を茶屋の敷地を借りて済ませ、この間に谷川の浅瀬を歩く準備を整え出発した。梅ヶ瀬川沿いの道を進み、途中、モリアオガエルの繁殖地と思われる沼に足を止めた。水面に張り出した樹木に白い卵塊を発見、大木講師はモリアオガエルのものだと教えてくれる。近くに数匹が見つかり一匹を採取、それから次々に東京ダルマガエル、イボガエルも発見。採取したモリアオガエルなど手の平にのせて見せてくれた。川原に下り、早速カジカカエルを見つける。声はすれども崖の中で鳴くため姿が見えないので“幻のカエル”と呼ばれるタゴガエルを探しに、上流に向って浅瀬を遡行した。

右の白いかたまりがモリアオガエルの卵塊、左の木に居るカエルの姿が見えますか?

毎年この現場を訪ねてタゴカエルの調査を行っている大木講師によると、このオタマジャクシは、変態するまで体内の卵黄の栄養だけで地下水が染み出る穴の中で過ごすという。厳しい環境を選択して生き残ってきた幻のカエルの一生の話は、とても興味深いものであった。今日見つけたカエルの種類は何と10種類。千葉県には14種類のカエルが生息するそうだが、あと1種でパーフェクトでしたと大木講師。しばし少年少女に戻った受講生は、蛙に夢中になり、カエル博士になった気分で月ヶ瀬渓谷を後にした。
バス組は17時過ぎに千葉駅に到着、バスの中で懇親会(食前会)開催が急遽決まり、到着後、18名が駅前の中華レストラン「華蓮」で丸テーブルを囲み、19時に解散した。

次回は、6月21日の第14・15回講座「海に自然入門」、講師は奥野淳児氏

渓谷から戻った日、朝日新聞夕刊のコラム(「命の息吹 2年ぶり確認」)に、福島県川内村でモリアオガエルの産卵の記事が掲載されていた。この時期を見計らって行われたこの講座は、新緑の緑と渓谷のさわやかな水のせせらぎに癒されながら、フィールドでの学習のおもしろさを存分に堪能させるもの。緻密な配慮に感謝。

千葉の地層の成り立ちと養老川の川廻し
梅ヶ瀬渓谷では、大木講師の地質学ミニレクチャーも聴けた。堆積した地層の縞状模様がはっきりと見える崖の下に案内され、これが60~70万年前に土石流が堆積してできた千葉県内でよく見かける地層であると紹介があり、これが砂の層、これが泥の層と、ハンマーで叩きながら聞き分ける砂岩と泥岩との違いや交互に堆積し縞模様を形成していく地層の成立ちについて判り易く教えてもらった。
バス車中でも興味深い話を聞いた。養老川の川廻しについて三木雄三氏(同乗された山の専門家)から説明があった。隧道を掘削し、迂回していた川を直線に結ぶことで川筋を変え農地として利用できるようにすることを川廻しと呼んだそうだが、屈曲した川の流れを変えるための土木工事の苦労話を聞いたが、蛇行する養老川をうまく利用した養老川上流域の先人達の創意と努力に頭が下がる思いだ。始めて聞いた事実に驚き、実際に川廻しによってできた地形を養老渓谷のあちこちで確認することができてもう一つ勉強させてもらった。歩いて周辺の景観を楽しむだけでなく、移動しながらいろいろなことを学ぶことができる現場学習の醍醐味を堪能した。
  
写真は垂直に切り立った梅が瀬渓谷の崖。砂や泥、火山灰が堆積して出来た地層が交互に堆積することで縞模様になっているのが見える。これが千葉県でよく見受ける地層で、この台地が海低であった頃のものだ。写真では見えないが、後方の崖には隧道が掘られており、それまで彎曲していた川が直線の流れに変った。手前に見える農地はその結果できたものである。これを養老川の川廻しと呼ぶ。

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