第8,9回講座「植物学入門」

講師 古木達郎
開催場所 中央博物館
開催日時 2013年5月23日

テーマは、「植物学入門」
県立中央博物館講堂にて

古木 達郎講師楓の学名調べ

先週から日差しの強い日が続いている。二十四節句の小満に当たる今週は、秋に蒔いた麦などの穂がつく頃でほっと一安心する季節に入ったとともに、五月尽くという季語もあるそうで、爽やかな皐月晴れの季節も終わりということか。
本日の講座は、新説が次々と発表され図鑑などの修正が追い付いていかないという植物学の講義。その基礎的なことを学んだ。講義スタイルは質疑応答の時間を重視したもので、会場から寄せられた数多くの質問に答える形で進められた。頭の中を整理しながら聴講することができ、基礎を理解するには都合がよかった。午後からは、秩父で採取された10数種類の楓を図鑑で読み解き、標本と見比べながら、学名を調べるという実技講習が行われた。似たものが多い楓の葉を特定するのに苦労されたグループもあったが、予定よりも早く終了することができた。

第8・9回講座 「植物学入門」
講師 古木 達郎氏(千葉県立中央博物館主席研究員兼 植物学研究科長)
日時 平成25年5月23日(木)10:00~15:00 
場所 千葉県立中央博物館講堂
内容 
植物とは何か、その進化、特徴、名前(学名)の付け方、多様化など、基礎的なことを丁寧に説明された。例えば、動物と違い細胞壁がある植物は、細胞を分裂させることができないので、成長するには細胞を積み上げていくしかなく、その結果、木皮が硬くなった木などの植物は水分を幹の中の導管で吸い上げて上へと伸びていく。細胞を包む膜は死んでいるので、枝が折れても切られても、植物は成長を遂げることができる。こんな進化を巡る話を聞いていると、植物が身近なものに思えてくる。
2界説から始まったリンネ式階層による植物分類体系は、顕微鏡により細菌や微小な生物の存在が明らかなり、又細胞の作りや核構造の違いからその後5界説に分かれた。
更に、電子顕微鏡の発達により細胞の構造が観察できるようになると、8、9界説まで発表されて際限がない。今日では、分子(遺伝子)による解析が進み、どの共通の祖先から分かれたのかという系統的な分類体系の方が一般的になっている。

植物学入門の講義が始まる植物は原核生物と共生し進化した細胞を包む膜(壁)は死んでいる
壁で包まれた細胞のため、成長するには積み重ねるしかない陸に上がった植物は、水の要らない花粉という仕組みを作り進化した。学名を読み解くと、分類学研究の歴史が分かってくる。

午後からの実技講習は、植物の標本のもつ意味について基本的なことを学んだ後、グループに分かれて楓の名前調べを行った。標本は生物の特徴だけでなく、採集された場所の植物相の証拠であり、それは過去からのメッセージであり、未来へのメッセージとなる。

講義の始まり植物を調べる班に分かれて楓の学名調べ
どれも似ていて分かりにくい!標本と見比べて特定する講義風景

トップに戻る