特別レポート 夏休みのシニアボランティア活動

開催日時 2012年8月1日 〜 2012年8月31日

夏休みのシニアボランティア活動

8月はシニア自然大学の講座も休講になる。夏休みに入る前に、この休みを利用したボランティア活動や体験旅行などへの積極的な参加の呼びかけが事務局からあり、10数名の申し出があったと耳にしていた。

8月23日(木)、20数名が参加する暑気払い会が千葉駅前の中華料理店で開催され、この夏に参加したボランティア活動について、佐藤良子氏・大澤康男氏・植沢俊氏・太田博文氏・末綱達夫氏の順に5名の方から報告があった。大房岬自然公園(南房総市)の清掃活動に14名、月出(市原市)子どもキャンプに4名、信州長野市の聖山の子どもキャンプに2名、計20名の受講生が猛暑の中で汗を流しながらそれぞれ活動されたことになる。その体験談が発表されたが、7日間もキャンプで子どもたちと過ごしてこられた人からの発表はその時の様子が伝わってくる熱のこもった語りに聞く者も感動し、それぞれの話はこれからのシニアの社会活動参加を勇気づけてくれるものであった。お疲れ様でした。

8月24日 暑気払い会 千葉市内中華料理店「華蓮」にて

信州・聖山子どもキャンプ視察記
ボランティアスタッフとして参加した信州・聖山サマーキャンプ

現場で見てきたシニアのボランティア活動
 8月4日(土)より10日(金)までの一週間、長野市聖山キャンプ場で開催された恒例の子どもキャンプに、シニアボランティアとして参加し46人の子ども達とひと夏を過ごしたのは、受講生の末綱達夫氏と太田博文氏。36回を数えるキャンプにシニアスタッフが参加したのは始めてだったそうで、その歴史に新しい一頁が刻まれたことになる。
筆者は長期間滞在している二人の活動現場を訪ね、キャンプ生活を見学させてもらい、生の声を聞きたく、長野市聖山キャンプ場を訪れた。麓では30度を超す猛暑が続いていたが、木々に囲まれた高原は暑熱も届かずに過ごし易く、3日間寝食を共にし、二人の活動を垣間見てきた。現地でお二人の子ども達や若いリーダーとのやりとりを見て、その受け答えなどから、置かれている位置や状況を窺い知ることができた。

子ども達から元気をもらった
 聖山キャンプ場で二人に再会したのは、キャンプ5日目に当たる8月8日の午後。既にキャンプも4日が過ぎており、疲労も堆積している頃と案じていたが、血色もよく、活き活きした二人にお目にかかれた。“毎日が楽しい。” “金に換えられぬものをここで得た。”“良い出会いがあり、子どもたちや若いスタッフと友達になれたのが嬉しい。”と、二人は興奮気味に、感動が詰まった毎日の生活のことを語ってくれた。その高揚感は、キャンプに参加している子ども達の元気をもらったものではないかと思う程であった。充実した日々を過ごしておられるようで安心した。

この日、太田氏は夕食用ピザの生地づくりの最中で、末綱氏は火起しの準備中であった。
聞けば、二人はキャンプの駐在(キッチン担当)スタッフとして活動しておられ、3食の炊事当番として厨房での仕事や配膳などの業務をこなしておられるとのことであった。末綱氏はその他に火起しアシストを申し出ておられた。キャンプの毎日は朝5時起床、就寝9時となっている。3食の準備をする炊事の仕事は立っての仕事であり結構厳しいものがあるが、2人供嬉々と動いておられたのが印象的であった。


参加の動機など
ボランティア活動への参加動機について二人に聞いてみた。事前に相談して申し込んだのではないとのことで、たまたま2人から参加の申し出があったことになる。大学で考古学も学び始めたという太田氏は現役世代、アウトドア派で好奇心旺盛な方である。調理師資格が少しは活かせるのではと申し込んだとのこと。末綱氏は老人大学で学び、自治会など地域活動が豊富な方。薪割り位のお手伝いできるのではと申し込んだとのことであった。太田氏は資格を活かす機会は余りなかったようであるが、末綱氏は火起しの技術と経験が活かせたようである。
キャンプ生活に不安を感じなかったかとの質問には、事前にキャンプのことを記録した30年誌を渡されていたのでキャンプの生い立ちなどを知ることができ、出発前には他のスタッフと共に保護者への説明会にも出席する機会があり、全体の流れが理解でき、様子も判っていたのでそれほど不安はなかったそうである。

気兼ねのない交流
 カヌーやパラグライダー、岩魚つかみなどの体験プログラムにも積極的に参加し、キャンプ生活を楽しんでおられた。しかし、何よりも忘れ難い体験は、子ども達や若いキャンプリーダーとの交流にあったようだ。あちこちでレオンとか、ニックと呼びかける子ども達の声を聞いた。“はーい、レオン”とか、“おはよう、ニック”と、2人にとっては孫や曾孫に当る子どもから気楽に声がかかるのには驚かされた。
キャンプでは、キャンプネームでお互いを呼び合うことになっており、本名では呼ばない。末綱氏がレオン、太田氏はニックがここでの名前。キャンプネームで呼び合うときは無礼講となり、年齢に気兼ねせず、敬語も不要となる。このときは仲間言葉で話しかけてくるので、フランクな会話が成立っていた。このようにキャンプネームで呼び合うことで、お互いが気兼ねなくコミュニケーションを交わしていた。2人は付けてもらったキャンプネームを大変気に入っているようで、子ども達の心をつかんだ平均70歳のシニアは毎日を楽しく過ごしておられる様子だ。年齢を忘れて子ども達と気楽に会話ができることは、シニアにとって誠に嬉しいことだ。


始めてのシニアスタッフキャンプスタッフ表

このキャンプでは、運営を支える重要な役割を担うスタッフとして、5名の千葉大の現役学生ボランティア(教育学部の学生が多い)が子ども達をまとめるリーダーを務め、駐在、キッチンスタッフとして、現役学生や大学OBの社会人6名がこれを支えていた。そこに2名のシニアボランティアが加わった。千葉大生のボランティア活動はキャンプ誕生以来続けられているとのことで、こうした若い人達によりキャンプは運営されてきているので、シニアが活躍したという話は余り聞いたことがない。筆者もシニアの参加を早い時期から願っていたものだが、今回は千葉自然学校の呼びかけに2人が手を挙げて、新しいスタッフ陣が誕生したものだ。
 “今回初めてシニアのボランティアスタッフを受け入れました。”と語ってくれたのは、36年の経験をもつヤックス自然学校の聖山キャンプ村長こと、責任者の小松敬氏。今回は、長い歴史の中でシニアのスタッフを迎えた始めてのキャンプとなり、その豊富な知識や経験、技が活かされたのではなかったかとまずまずの評価。キャンプスタッフに何より求められるものは規律であり、他のスタッフとのバランスをとることが重要で、シニアスタッフにも同じことが求められる、と強調する小松氏にとって危惧するところはバランスにあったようで、この点も及第点を頂くことになった。全ての参加者に規律を守ってもらうこと、子ども達、若いスタッフ、シニアの世代間でバランスを保ちながらキャンプ運営を図ることが大事であると臨んでこられた小松氏は、40名のキャンプではシニアスタッフの受入れ人数も2名程度が適当であろう、と次年度以降のシニアの参加に期待を寄せられた。

シニアボランティアの役割
シニアボランティアの役割の一つは、人生を永年歩んできたシニアの知識と知恵、経験と技術を活かすことにあると思っていた。どういう場でそれを活かすことができたかと聞いてみたら、若いリーダーとは異なった対応が出来ることが強みではないかとの答えがかえってきた。子ども達の喧嘩仲裁役を引き受けたことがあったそうで、喧嘩両成敗で仲直りをさせ、それからは仲の良い友達に変っていった子どもの例を聞いてみると、若いリーダーとは違う方法で事を処せられたのではないかと想像がつく。子ども達だけでなく、リーダーにも良い刺激を与えることになっただろう。又、リーダーたちから教えてもらうこともあったとのことで、例えば、油の付いた食器を予めティッシュペーパーで拭きとった後に水で流すというエコに配慮した食後の皿洗い方を指導するリーダーの様子を見てなるほどと思ったという。

世代を超えた交流
小松氏が指摘するように、シニアスタッフがリーダーの活動分野に勝手に入り込んで動くことは組織のルールを乱すことになるのでこれは気をつけねばならない。規律を守り、バランスをとりながら経験と技術を活かすことが大事である。調理免許をもつ太田氏も、キャンプの献立などは事前にプランが練られており、でしゃばることは避けたと語っておられた。
確かに、子ども達の溢れるエネルギーを引き出してやるには、若い大学生のノリのよい指導は効果的である。子ども達のお兄さん、お姉さんとして指導者の役割をうまくこなしていた。一方、シニアは、子ども達の驚きや悩みをしっかり受け止めて対処できる相応しいキャリアをもっている。それぞれの世代には特色があり、この特色をキャンプで活かすことができれば、深みのあるキャンプ生活ができるのではないかと思った。
世代を超えたいろいろな出会いがあり、お互いをそれぞれが刺激し合うことで新しいものの見方が生まれ、良い効果をもたらすことになるのではないか。シニアは子ども達から元気をもらい、子ども達もおじいちゃんから知恵を教わった。リーダー達も何かを得たに違いない。異なる世代が集うことで、これまでとは一味違った交流が生まれることは素晴らしいことである。これからもっと広く、もっと深い交流の広がりを期待したい。活き活き“おじいちゃん”と接した子ども達は、どんな印象をもって帰ったのであろうか。



◎ 「第36回聖山サマーキャンプ」ブログより
千葉自然学校のホームページに掲載された記事
聖山:お手伝い [2012年08月05日(Sun)]

この二人は今回キャンプのお手伝いをしてくれている。シニア自然大学のボランティアスタッフのレオンとニックの二人。普段は、料理の補助やプログラムの準備をしてくれます。
今回は、カヌー中に池に落ちてしまいました。失敗、失敗といいつつ笑顔です。
byディレクター矢島(とっくり)

聖山:ひとつの大きな炎 [2012年08月09日(Thu)]

先ほどキャンプファイヤーが無事に終了しました。
45人の子ども、リーダー全員がひとつの炎を囲むことが出来ました。
by 村長 ボクサー

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