第58,59回講座「自然体験活動の企画・立案、地域再生」

講師 小松 敬、加藤 文男
開催場所 南房総市 とみうら元気倶楽部 さざなみホールほか
開催日時 2013年2月21日

テーマは、「自然体験活動の企画・立案」と「地域の再生」
南房総市の元気倶楽部と周辺の道の駅にて

小松敬講師による「自然体験活動の企画・立案」講座と加藤文男講師による「地域再生」講座。前回に続き南房総市富浦に出向いて行われた。2月に入ってこのところ、大陸からの寒気が日本列島に次々と接近し続けているために、最低温度が3、4度、最高温度でも10度を下回る寒い日が続いている。今日は幸いに冬陽が暖かい好天日。貸切りバスで南房総を往復して、少しではあるが観光旅行の気分を楽しむことができた。

午前中の小松講師による講座は、元気倶楽部での座学講義。小学6年の時に母に言われて1泊2日のお寺に泊まる企画を立案してみたという小松氏は、その後、自然体験活動指導者として歩んでこられたこの分野における大ベテランである。昨年の夏受講生2名が参加した長野県聖山キャンプの事例を中心に、自然体験活動がどのように立案され、企画化されているのかについて解説された。臨場感あふれる話に聞き入る。
午後からは、加藤講師が取り組んでこられた地域再生の現場を視察した。道の駅「とみうら枇杷倶楽部」を拠点に広がった南房総市の地域再生の動きは、合併後の南房総市の他地区にも波及し、同市には現在8つの道の駅が生まれている。全国的にも珍しい。その立役者であった加藤氏に、枇杷倶楽部周辺にある3つの道の駅を案内してもらった。

小松 敬講師さざなみホールが教室

第58回講座 「自然体験活動の企画・立案」

講師 小松 敬氏(NPO法人千葉自然学校 事業推進部長)
日時 平成25年2月21日(木)10:00~12:00 
場所 南房総市とみうら元気倶楽部さざなみホール
内容 自然体験活動はどのように立案され企画化されているのか、その要諦を学んだ。

プログラムづくりと我が人生
 小松氏の講義は単なる体験に基づく話というものではない。魅力的な企画づくりに加え、企画の目的を達成するためのより効果的で、より実践的なプログラムづくりについて語られた。小学生時代に家の庭にテントを張り寝泊りしたという極め付きの体験を行ったのが始まりとなり、中高校時代はスイミングに凝り、その後自然の中での過ごし方を教える指導者になられた小松氏にとって、自然体験活動は人生そのものであるのかもしれない。いろいろな自然体験活動での体験が積み重なっており、それが氏の経験となっている。その経験と照らしながら語る講義であり、説得力がある。
頭の中にあるアイデアを文章にするという企画者としての作業も絶えず心がけておられるようである。今も未だ日の目をみていない2-3の企画案を立案し、秘かに抱えておられるとのことで具体的な案まで紹介してもらった。この講座は5W1H3Wに基づくプログラムづくりをテーマにするものであり、ややもすれば通り一遍の話に終わることもありうるのだが、このテーマを語るに相応しい人を得て、役に立つ講座を聞くことができた。

講義中の小松講師満開の菜の花畑

6W3H1Sのあるプログラムづくり
 プログラムづくりには2種類のものがある。全体のプログラムと具体的なプログラムとしてのアクティビティがある。プログラムづくりは、毎日のテレビやラジオの番組表づくりに似ているという。一日の番組表があり、各時間帯に具体的な番組が盛り込まれるが、自然体験プログラムでは、全体のプログラムがあって各時間帯の番組がアクティビティとなる。プログラムづくりの要諦として、6W3H1Sのことについて順次解説されていかれた。

1.When     目的を達成するためには何時実行するのが最適なのか?
2.Where     目的を達成する最適の実施場所
3.Who     主催者、協力者、スタッフ、保護者
4.Whom    参加者
5.What     実行課題=目的の明確化、ステップを踏むことで明らかになる。
         目的の明確化とは目的の理解と承認
6.Why      何故実施するのか、その根拠、理由
          実施することの必然性が明らかでないとモチベーションが低下し、
         やがてそのプログラムはどうでもよくなってしまう。
7.How to     目的達成のための実行手段
         状況に応じて手段を変える柔軟な対応が大切。計画で決めたことに  
         過度にとらわれない柔軟性があってよい。予備プログラムをもって
         おくことが大事。
8.How much   見積もりと相場
9.How many   どのくらいで。相場は?
10. Safety    安全に。 保険を付保すること。

○引出しを多く用意しておく
目的が達成できなかった時、時間が足りなかったという反省をよく耳にするが、足り
なかったのは時間ではなく、プログラム計画が足りなかったと理解すべし。計画を立
てるときは、目的達成するための中心となるアクティビティを先ず固め、その上で周
辺のアクティビティを用意しておく。言い換えれば、引出を多く用意しておくこと。

○ 安全管理について
弱者を護る義務はあるが、自然の中では自分の身は自分で守ることを理解させること。


第59回講座 「地域再生」(その2)

講師 加藤 文男講師(観光カリスマ・(株)ちば南房総取締役)
日時 平成25年2月21日(木)13:00~15:00 
場所 南房総市の道の駅「大津の里」・「枇杷倶楽部」にて
内容 3つの道の駅を案内してもらい、地域再生の現場で観光客の賑わい、いきいき働く従業員、快適な空間と景観、便利な交通などを視察した。

地域の再生が目指すところ
 当日配布されたプリント(枇杷倶楽部プロジェクト)に、“人が自立し、個性をもち、地域にかかわろうとするように、枇杷倶楽部も自活し、文化性をもち、地域に貢献していく”と書かれていた。これが地域再生を目指す枇杷倶楽部の理念であろう。ハードの整備は相当進んでようで、加藤氏はこれからも経営の黒字化を維持しながら、更に地元の人が誇りをもてるような地域づくりをしていきたいと語り、特に文化性のことを強調された。筆者は文化性とは何かと加藤氏に質したら、例えば、来訪された観光客に従業員が自分たちの技術や生活について誇りをもって語れ、示せることであるとの答えが返ってきた。

○道の駅の賑わい 
 それまでは夏のシーズンしか観光客が訪れていなかったが、今は年間を通して観光客を誘致できるようになっている。年間70万人を誘致しているという。
○雇用の創出
 2つの施設で約70人の雇用を生んでいる。
○農業、商業の活性化に貢献
 富浦特産の枇杷を使用したオリジナル商品が多く売店に並んでおり、生産、販売がこの地で行われている様子が分かった。約40億円の地域波及効果が生まれたという。
○快適な空間と癒しを与えてくれる田舎の景観
 都会人がイメージする田舎の景観がそこにあった。
○便利な交通の結節点
 
花倶楽部(道の駅おおつの里)
 最初に立ち寄ったのが道の駅「おおつの里」。枇杷倶楽部から4キロの地にある。幹線道路の沿線に立地しているわけでもないのに観光客が訪れている駅だ。ポピー・金魚草・スターチス・カーネーション・ユリ・なでしこ・アリスロメリアなどの花摘みや、枇杷やいちご・ブルーベリ狩りを楽しめるフルーツ観光農園がここにある。加藤氏の説明によると、当初は枇杷倶楽部周辺に観光施設を集積させるプランであったそうだが、敢えて分散して造られたものだそうで、平成15年に道の駅に認定されている。分散させることで地域の拠点となり、地元の農家の元気を引き出す効果をもたらしている。GWまでは花摘みが可能な花摘み園は、屋内型の施設としては全国一の広さを有するものだとか。インターネットビジネスがヒットしている。

解説中の加藤講師花倶楽部の芝生公園

道の駅グランプリ2000で最優秀賞を受賞した道の駅「とみうら枇杷倶楽部」
 平成5年に産業、文化、情報の拠点づくりとしてスタートした枇杷倶楽部プロジェクトについては、前回の加藤講師の講義で既に語られており、施設も視察済みで、本日は枇杷倶楽部裏のいちご園を視察した。シーズンであるのもかかわらずいちご園には観光客の姿は見えない。そのはずで、ここで栽培されているいちごは3月までは売り切れとのことで、注文に栽培が追い付いていかないため休園状態になっていた。

いちご園の道を行く田舎風の景観が蘇る
いろいろな事業が積み重なり今日がある。一日にしては成らず。売れすぎて栽培が間に合わないいちごハウス
花倶楽部で記念撮影バス車中

次回は、第60回講座(2月28日) 
講座名:「海の自然入門その2」 
講師 :宮田昌彦氏(千葉県立中央博物館分館 海の博物館館長)
:青木慎哉氏(千葉県立中央博物館分館 海の博物館上席研究員)

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