第52,53回講座「自然体験活動の指導法」

講師 谷 慶子
開催場所 千葉県立君津亀山少年自然の家
開催日時 2013年1月24日

テーマは、「自然体験活動の指導法」
千葉県立君津亀山少年自然の家にて

自然体験活動の現場で指導者として活躍する谷慶子講師による「自然体験活動の指導法」講座。本日の教室は、君津市にある少年自然の家と周辺の自然。施設に至る房総スカイラインの道端には先週積もった大雪が未だ溶けずに残っていたが、冬陽が暖かい日和に恵まれ、座学とフィールドでの学習が予定通りに行われた。

午前の座学は、アイスブレークで心と身体の緊張をほぐした後、教室で体験学習のことなどを教わった。午後からは、昼過ぎには裏山のフィールドに出て、セラピーコースを歩きながら周辺の自然を観察するプログラムに参加した。午前中に学んだ体験学習指導法に基づくプログラムに自ら参加することで、その進め方や振り返り、分かち合い、まとめなど指導者として知っておきたいことを学ぶことになった。自然体験活動の指導経験がほとんどない受講生を対象にした講義であり、方法論の講座になると退屈する人も出てくる恐れもあったが、谷講師は対象者を理解して指導するという体験学習の教えに沿って自らが指導者の範を示され、分かりやすく楽しく学ぶことができる講座となった。

谷 慶子講師アイスブレーク風景

第52・53回講座 「自然体験活動の指導法」

講師 谷 慶子氏(NPO法人千葉自然学校 ネットワーク・受託事業部長)
日時 平成25年1月25日(木)10:00~15:00 
場所 千葉県立君津亀山少年自然の家と周辺
内容 座学での講義と自然体験プログラムに参加して、体験の効果や意味、学習効果が高い体験学習の指導法について学んだ。

体験学習を指導する
谷講師は体育教師になるか自然体験活動指導者を選ぶかで迷われたそうであるが、指導者として歩み始めることになった自らの動機について、大房岬少年自然の家での経験が今の道を歩むことを決意させたと打ち明けてから、講義を始められた。
 
アイスブレーク風景
ウォーミングアップとして、アイスブレイキングが30分かけてじっくりと行われた。アイスブレークは、体験活動を始める際の導入部分に用いられているプログラムで、研修会の始まりなどでも行われるようになっている。第一回講座で佐藤初雄講師もアイスブークから始められた。アイスブレークにはいろいろな方法があるが、参加者同士が互いの心の緊張をほぐし、楽しい雰囲気をつくり、緊張した身体をほぐすことを目的に行うものである。更に、参加者同士やスタッフと親しくなったり、お互いを知り合ったりする、そんな目的のためにも行われている。ゲームに参加する感覚で行われる。今日は4つの方法が紹介された。親指を使って行うもの、手をたたいて行うもの、互いが手を握り合って行うアイスブレークは教室内で行われ、参加者が輪を作って名前・ふるさと・生年月日ごとに輪に並ぶ人の順番を入れ替えるゲームは広い場所に移動して行われた。

再び教室に戻り自然体験活動の説明を聞く。少年自然の家で行われている子どもたちを対象とする教育活動のことに絞って話をされた。自然に触れ、その中で過ごす活動を指導する者が知っておくべきこと、例えば、体験学習の流れや伝え方の技術などについて教わった。自然の中にはさまざまな生物が居て、未知なことが溢れており、子どもたちにとっては自然に触れ合うことだけでも自分の体験となる。更に新しい体験の機会を指導者からも提供される。こうした体験を活かした学習が体験学習である。聞いたことは忘れる、見たことは覚えている、体験したことは理解できる、発見したことは使えるという経験則があるが、これは学習効果を高めていくヒントになる。体験学習の指導法では、未知なことを体験させることも指導の一つであるが、それは目的ではないとする。体験の後に振り返ってみることが大切であるとする指導法だ。振り返ることがないと、子供達はその意味をわからないままに終わってしまうことがある。体験学習はトライ&エラーであってよい。振り返ってみる。そして、皆で考えてみてそれを分かち合い、一般化しまとめていくことが重要である。これが体験学習のプロセスでもあり、このプロセスの中で何かを発見させることも重要であるという。ここで講義はしばし中断され、では発見とは何か、参加者に共通した理解を得てもらうための指導テクニックが披露された。

体験学習における「伝え方」
自然体験指導者には、「言ったかどうか」が大切ではなく、「伝わったかどうか」が重要視される。ここからが、「伝えること」についての講義となった。体験させることは手段であって目的ではないという。では、何を目的にするかというと、ここでは自然体験活動は組織キャンプとして行われており、チームの使命やミッションを伝えることが目的となる。この場合は、指導者はこうしたことを伝えていかねばならない。うまく伝えるためには留意せねばならぬことが5つある。それは、1.何故、伝えるのか 2.何を伝えるのか 3.誰が伝えるのか 4.誰に伝えるのか 5.どのように伝えるのか、である。

「何故」は、伝える意義のことで、「何を」は、ねらいであり、情報(内容)のことである。ここでの留意点は、ねらいや伝える内容の情報を共有すること。「誰が」は、自分の背景、価値観、想い、考え方などを開陳し、自分自身を棚卸することがポイント。次に、「誰に」であるが、ここでは一方的ではない、共感を得ながら伝えるコミュニケーションがポイントになる。そのためには互いの関係性、信頼関係を築くことが大切である。更に、対象者を理解することも大事なことであると指摘。体験学習指導法においては、特に、学習対象者を理解することが重要であるとし、時間をかけて説明された。それは、自然体験活動においては「安全」が常に最優先されるからであり、そして、相手がどんな人で、どんな状態にあるのかを理解しておくことが、狙いを伝えるためには必要であるからだ。

まとめ
筆者は年齢による体験の受け止め方の違いに興味を引かれた。子どもは体験を情緒で受け止めるためその体験が楽しかったら思い出(経験)になるが、楽しくなかったら忘れてしまう。大人は体験を意識で受け止めるきらいがあり、イメージと実際の体験が違っていたら不満となり、合うと満足することになる。大人の場合は、体験にはいる前にイメージの修正することが大事だとの指摘は参考になった。




ネイチャーゲームの手法を用いての自然観察が終わった後、広場で振り返りが行われ、最後のまとめが教室で行われた。まとめは、指導者として大事と思われることを一文字で描かせるものであった。

次回は、第54・55回講座(2月7日) 
講座名:「自然体験活動の基礎技術」 講師 庄司達哉氏

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