第40,41回講座「観光まちづくり」

講師 浅井信
開催場所 船橋
開催日時 2012年11月15日

テーマは、「観光まちづくり」
船橋市にて座学&フィールド学習

本日の講座は、「地域活性」講座。開講以来、「自然・環境」「農業」「健康」の分野に属する里山、里沼、里海の自然環境や農業のことを中心に受講してきた。本日から「地域活性」の分野が新たに加わることになる。この地域活性をテーマとする講座は、地域(まち)共同体の生活環境や経済環境がフィールドとなる。

今日は、まちづくりに貢献する「もう一つの観光」に関する講座。講師の浅井信氏が活躍する船橋市を学習の場に、地域と観光の関係について学んだ。もう一つの観光では、観光を振興するということは地域(まち)づくりを意味する。 “住みたいまちが訪れたいまち”というフレーズがこの関係を言い表す。観光立国宣言以来、市民の目線も変化してきて、観光まちづくりに対する関心が高まっている。論より証拠というわけではないが、観光がまちづくりにどのように寄与するのか、頭で学び、それを肌で感じる取る講座となった。

浅井 信講師講義風景

第40回・41回講座「観光まちづくり論」
講師 浅井 信氏(船橋市観光協会・ふなばし街歩きネットワーク副代表)
日時 平成24年11月15日(木)10:00~15:00
会場 船橋市勤労市民会館第一 会議室及び船橋市内
内容 観光の新しい潮流に関する概論と市民の係わり方についての講義を聞き、船橋の市民団体が実施している街歩きに参加して、地域と観光の関係について学んだ。

観光まちづくりの動き
午前は、「観光まちづくり論」の講義。午後からは、3グループに分かれ、3年前に船橋市に設立された船橋市観光協会・街歩きネットワークのふるさと案内マイスターの案内で、市内の街歩きに出かけた。ここ数日少し不安定な天気が続いていたので天候が心配されたが、幸いに好天に恵まれての街歩きとなり、観光気分も味わいながら、観光まちづくりにかける船橋市民の意気込みを知った。

大手旅行会社出身の浅井講師は、地域の観光振興に係わり始めて10年のキャリアをもつ。千葉自然学校の設立にも参画。現在は、地元船橋市の街歩き観光の振興に係わっている。観光の世界におけるここ20年の動きについて、バブル経済崩壊後の観光の大きな変動と新しい潮流という視点で説かれた。戦後からバブル期までは個人の楽しみのためにあった観光は、今日では、持続可能な観光(サスティナブル・ツーリズム)という理念をもったツーリズムとして新たな広がりをみせているという。こうした観光の世界の変化と低成長社会の経済や少子高齢社会を背景に、国は観光を推進力とする国づくり政策(観光立国)を打ち出した。以来10年になろうとしているが、地域で生まれた観光まちづくりは、この観光立国政策の支援を受けて、その動きは全国に広がっている。参加する市民層も広がりをみせ、定年後の団塊世代が加わるなど広範な市民層のボランティア活動として展開されるようになっている。

人見那良船橋街歩きネットワーク事務局長街歩き案内スナップ

マス・ツーリズムに代わる「もう一つの観光(オルターターナティブ・ツーリズム)」として誕生したニュー・ツーリズムの振興を通して、従来は観光地でなかった地域も、人を惹きつける観光資源が我が地域(まち)にもあることを認識するようになった。こうした資源はまちの生活環境や経済環境という常在資源であるが、これらの資源を活かした観光として着地型観光、或いは参加体験型観光が今注目されているという。自分の住むまちを魅力ある地にしていきたいと考える市民によるまちづくりの動きや観光地として発展してきた地域(まち)もその発展は地域の生活と切り離されたものではないとする動きが一緒になり、更に、少子高齢社会に突入し、居住人口の減少に悩む地方自治体の政策とも合致し、全国の多くの地域で観光まちづくりの取り組みが活発化している。千葉県下の市町村でも、ほとんどの地域でこの取り組みが行われるようになっているそうだ。

観光まちづくりに取り組む市民はいろいろな方法でアプローチしているが、街歩き観光はその一つの方法である。街歩き観光は、都市観光の一形態として、マス・ツーリズムに飽きた消費者のニーズを捉え、長崎さるく博の成功によりその経済効果が認められ、又、その取り組み易さがうけて、急速に全国に広まっている地域密着型のツーリズムであるといえる。このツーリズムは、市民によるボランティア活動として推進されているケースや行政と一緒になって推進が図られているケースが見られ、又、生涯学習などで地元学を学んだシニア層の、その知識を活かす社会貢献活動としても注目されている。船橋市の事例を通してその一端を見聞してもらいたいと締めくくられた。

廃業した銭湯でしばし休憩街歩き案内―ヘルスセンター跡で

街おこし歩き
午後の街歩きに出発する前に、ふなばし街歩きネットワーク事務局長・人見邦良氏から現在行われている街歩き観光事業について、簡単なレクチャーがあった。人見氏によると、平成21年に船橋市観光協会の事業として設立された「ふなばし街歩きネットワーク」は、街歩き案内を行いながら、平成23年、観光案内ボランティア養成事業としてふるさと案内マイスター養成講座(20日間・40講座)を開催。同講座の修了者40名にふるさと案内マイスターの資格が授与され、来訪者や市民に信頼されるガイド活動を行っていく基盤を築いたという。発足間もないので話術などの未熟さはこれから磨いていくことになるのでご容赦をとの断りの後、街に出た。

船橋市における街歩きの特徴として人見氏が強調されたことは、エンターティメント性、産業コンタクト性、ふれあい交流性を重視した街歩き案内のことであった。こうした要素は、従来から行われている寺社や名所をつなぐ街歩き案内では、余り重要視されていない事柄である。これらを実行することで、参加した来訪者により満足を、まちの商店ににぎわいを、そして、それがまち興しに…。こんな街おこし歩き観光を興していきたいと抱負を述べられた。

3コースに分かれて、各グループには3~5名のボランティアガイドが付き添い、街を歩いた。ふるさと案内マイスターから意富比神社(船橋大神宮)や船橋漁港、東照宮などの立ち寄りスポットで説明を受け、コースの途中に組み込まれていた休息所では茶菓子の接待を受けた。廃業した銭湯(ときわ湯)に立ち寄ったグループはタイル張りの洗い場に案内され、ここで休憩をとった。この休憩時間を利用して元銭湯の女将の話を聴いたが、しばらくはこのままで残しておきたいという高齢の女将さんの話に、銭湯華やかなりし頃のことを知っているシニア自然大学生は相槌を打って応えるなど、なごやかな触れ合い時間を楽しんだ。



浅井氏にお聞きすると、現在ふなばし街歩きネットワークに登録されているボランティアガイドは50名程おられると聞いて、この事業に対する市民の意気込み、熱心さに驚いた。こういった街おこしにかける草の根の情熱が育っていけば、必ずや近い将来船橋の活性化の大きな力になるに違いないと感じた。講座の終了後は久しぶりに受講生30人程で夜の街に繰り出し、浅井氏紹介の居酒屋で大いに語り、船橋の夜を堪能し皆帰途についた。

次回は、第42・43回講座 
日時 11月22日(木) 10:00~15:00
会場:塚本大千葉ビル8F会議室

第42回講座 10:00~12:00
講座名:花き入門
 講師 :金子 黎次氏(NPO千葉農業支援ネットワーク理事)
第43回講座 13:00~15:00
 講座名:肥料入門
 講師 :坂本 昌夫氏(NPO千葉農業支援ネットワーク事務局長)

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