自然誌講座 第1部 『渡り鳥と出会って知る、命、地域、地球、宇宙』
第2部 『特別展 ティラノサウルス 肉食恐竜の世界』の解説

講師 安西英明
開催場所 中央博
開催日時 2012年11月16日 午後

テーマは、「渡り鳥」と「恐竜」
千葉県立中央博物館・講堂にて

講師 安西 英明氏(公益財団法人日本野鳥の会 主席研究員)
日時 平成24年11月16日(土)13:30~15:15
会場 千葉県立中央博物館 講堂

会場となった中央博物館の講堂には、シニア自然大学の受講生も含め、60-70名の聴講者が聴きに訪れた。冒頭、主催者の千葉自然学校・飯田洋理事長から、この公開講座はシニア自然大学の特別講座で、南房総体験活動ネットワーク協議会と千葉県立中央博物館による共催講座であるとの紹介があり、「自然誌」をテーマとする内容である旨の挨拶があった。「自然誌」という言葉についてである。挨拶ではこの点については特に触れられなかったが、英語はナチュラル-ヒストリー、日本では自然史ではなく自然誌と書かれるのが一般的とのことで、自然について誌されたものという意味である。本日の「渡り鳥と出会って知る、命、地域、地球、宇宙」は、渡り鳥はもちろん、とりまく自然環境、そして生物多様性について、自然誌を語る1時間半の講演であった。
講座は二部構成となっており、博物館で開催されている特別展「ティラノサウルス 肉食恐竜の世界」についての解説があり、発表の後、希望者は展示会場を見学した。

本日の講師は、日本野鳥の会主席研究員の安西英明氏。1981年、日本で初のバードサンクチュアリ「ウトナイ湖サンクチュアリ」のチーフレンジャーとして赴任され、現在は日本野鳥の会主席研究員として、野鳥や自然観察、環境教育などをテーマに講演に全国や世界各地を巡る多忙な方。NHKラジオ「日曜あさいちばん」(5時台の番組)で毎週日曜日に「季節のいのち」を10年以上も語り継いでおられるスペシャリストとの紹介があった。

講演「渡り鳥と出会って知る、命、地域、地球、宇宙」の要旨

チ、チ、チという小鳥のさえずりが会場に響いた。“ジョウビタキの鳴き声が中央博物館前の木々から聞こえてきましたが、耳にしましたか?”小型レコーダーを操作しながら安西講師は、千葉に飛来した可愛らしい渡り鳥の鳴き声を聞かせてくれた。今日の講義は、このようなスタイルで始まった。ドラエモンのごとく腹のポケットからいろいろな鳥の模型を取り出し、檀上から会場へと飛び跳ねながら、渡り鳥の仲間たちを一つ一つ紹介していかれた。



千葉県の鳥はホウジロ、東京都の鳥はユリカモメ、茨城県の鳥はヒバリ…と。こうした画一的な紹介だけではない。小鳥たちの体の特徴やチチチチ、ピピピピピ、チュチュウ、ツーピー、ツーピーなどそれぞれの鳥の鳴き声について、或いはカラフルな色彩について、取り出した等身大の模型や羽根のサンプルを会場に回しながら、丁寧な説明を加えつつ話を続けられた。その一つ一つが面白い。話の途中に、くちばしの形の違いについて、ドングリを隠す鳥の習性、鳥の生存率など興味あるエピソードを交えての解説であった。鳥の世界の話に聞き入っていると、あっという間に予定の時間が過ぎていた。

鳴き声などはとても覚えられるものではない。長年にわたり鳥を研究してこられた安西講師はそのことは分かっておられるので、鳥の鳴き声の覚えるには慣れしかないですよと慰めてくれる。鳥に関する知識に乏しい筆者、これで気が楽になって更に聞き入ることになる。鳥の紹介の最後になったが、トウネン(シギ科)という聞き慣れない渡り鳥の名前を紹介された。聞けば北極から日本にやってきてニューギニアに渡るという鳥だそうで、最長距離を飛ぶこの小鳥に最も惹かれるとのこと。安西講師は、これらの渡り鳥と出会って巡る季節の確かさとなつかしさを少しでも感じ取ってもらえれば…、と締めくくられた。

日本で確認されている野鳥の種類は633種、見慣れている鳥がその内の53種とか。今日の講義の中でいろいろな渡り鳥を紹介されたが、ノートに書き留めていたものだけで30数種に及んだ。南方(東南アジアやオセアニア)からやってくるオオルリやサシバの夏鳥、北方(シベリロシアなど)からやってくるカモ類や白鳥やツグミなどの冬鳥、渡りの途中日本に立ち寄るシギ、チドリなどの旅鳥、これらの鳥が渡り鳥である。先日のシニア自然大学講座(里沼活用論講座)でも、印旛沼で200種の渡り鳥を見ることができると教えてもらっていたし、今日の話でもそのような紹介があったので、三分の一の種類の鳥たちを千葉県で見ることができるということになる。太平洋に突き出た千葉県を経由地に選び、通り過ぎているのだろうか。そういえば、船橋市沖の三番瀬にも200種位の渡り鳥がやってくると聞いたことがある。

尚、千葉自然学校からの発表によると、安西英明講師による全12時間の講義が平成25年度のシニア自然大学専攻科において計画されている。

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