第28・29回講座「動物学入門」

講師 宮野伸也
開催場所 中央博物館
開催日時 2012年9月20日

テーマは、「動物学入門」
座学と野外での観察(トンボ採集と名前調べ)

 教室を中央博物館に移し、宮野伸也講師による「動物学入門」講義を聴講した。午前は座学、午後からは、隣接する青葉の森公園での昆虫観察と捕獲したトンボを持ち帰りその名前を調べる実習が行われた。

 トンボ採集に適当な時期を選んで今日の講座が設定されたようだが、未だ30度を超す日差しの強い野外の昆虫観察となり、もしかするとこの暑さにトンボが山から帰っていない?との心配もあったが、2人1組で補虫網を持って青葉が濃い公園の池の周りに出てみると、1時間位で4~5匹位のトンボを各組は採集することができたようだ。受講生の中には昆虫採集40年という大ベテランも居られ、さすがに捕獲数が違っていた。

 研修室に戻り、絵解き検索資料を参考にトンボの種類(学名)を調べた。講師に判定してもらった結果、この時期に千葉で普通に見かけるトンボ7種類の内、5種のトンボを採集していたことが判った。名前の調査も終り最後の講義に移って、ここで興味深い話を聴いた。トンボの雄と雌のことから話しが始まったのだが、空を舞うトンボからは想像しがたい、小さな昆虫の生存を賭けた行動についての話に聴き入った。トンボの雄は精子保存のために雌の体内に残る他の雄の精子を掻き出すという凄まじいばかりの行動をとるという。DNAのなせることか。

宮野 伸也講師青葉の森公園にて

第28・29回講座「動物学入門」

講師 宮野 伸也氏(千葉県立中央博物館自然誌・歴史研究部長)
日時 9月20日(木)10:00~15:00 
場所 千葉県立中央博物館 研修室
内容 28回講座は動物を理解するために必要となる基礎的な知識を学び、29回講座では野外で昆虫を観察し、トンボを捕獲してその名前の調べ方を学んだ。

休み時間にも質問相次ぐトンボ密度より、人の密度の方が高い!

 以下は、動物学の基礎を解説する講義内容の概要。
1. 動物とは
2. 生物(動物)は進化する
3. 分類体系
4. 動物の名前
5. 動物の研究

 動物が他の生物と異なるのは、体内消化により養分を吸収することにあるとされる。では、生物とは何かというと、過去には動物と植物からなると考えられていたが、現在では、5界(モネラ界、原生生物界、菌界、植物界、動物界)の生物からなるという説が有力で、外界から隔離された構造をもち自己増殖をするものであると定義されている。しかし、ウイルスのように自己増殖能力を持つが生物とされないものもあり、生物と非生物を区別するのはなかなかむずかしいという。

 かっては神が創造したものと信じられていた生物は、現在はもちろん進化に基づくものとされ、その生命の起源は単一であるとされている。この進化論によると、地球上に見られる多様な生物は進化の結果であるとする。生物を5界に分けて分類し、これは植物学の講義でも教わったことであるが、この分類は人為分類とされる。進化は実証されにくいものだそうであるが、分類方法も進化に基づいて分類する自然分類を目指しているとか。このような研究が動物学では進んでいるのであろう。進化に関することでは受講生の関心も高く、単純なものから複雑なものに変化していくとする進化論に対して、複雑から単純に変化する進化はあるのかとか、進化を引き起こす突然変異についての質問があった。突然変異はDNAの破壊や設計のミスから起るものと宮野講師から説明があった。余談になるが、先に崎山樹先生の「健康と医学」講座でDNAについて少し教わっていたので、その意味するものの一端を理解する助けとなった。シニア自然大学講座を受講した成果のひとつか。

 次に、種から始まる分類体系について解説があった。生物の基本単位は種であり、ヒトの場合は、次ぎのように分類されるそうある。その外、上科、亜科、族、亜族などの分類体系があるとのこと。一般的に使われている哺乳類など“類”という単語を使った分類は、これはあいまいさを含んでいるので正式な分類ではないとのことであった。
 種  ヒト
 属  ホモ属
 科  ヒト科
 目  霊長目
 綱  哺乳動物綱
 門  脊索脊椎動物門
 界  動物界

絵解き検索表による名前調べ

 動物の名前の付け方について。日本語表記は和名と呼ばれ、カタカナで書かれる。世界で共通の名前を学名といい、ラテン語で書かれる。種の名前の場合は原則2語で表され、1つの種に1つの学名が対応する。これに対して、例えば、トンボという名前の場合は、目とか科に対応する分類名を指す。このようないくつかの種を含む集まりに付けられる名前を総称と呼ぶ。種と総称については、筆者も含め、一般には種と総称を混同しているケースが多いのではないかと思った。トンボという名前は「目」と「科」に対応する分類名であるとテキストに書いてあるのを見た受講生から、では、トンボの種にはどんなのが居るのか?という質問が寄せられた。こういう質問で自分のうろ覚えに気付くことになり、これも楽しい。

 午後からの野外観察は、事前に昆虫のいろいろな観察方法(ありのまま観察、捕獲して手に取って観察、マーキングして観察、標本を作って観察、飼って観察、実験)について説明を受け、公園に行き、ここに棲息する昆虫を観察した。観察はトンボの捕獲に夢中になってしまうことになり、摑まえたトンボを持ち帰り、その名前を調べた。よく似た種類が多いので捕獲したトンボの名前を特定するのは、大変で難しかった。最終判定を講師に仰いだが、間違った名前だと指摘されるケースも結構あった。最終的に確定することができたトンボは、ウスバキトンボ、シオカラトンボ、アキアカネ、ノシメトンボ、リスアカネの5種で、アキアカネ以下がアカネトンボ属のトンボであるとのこと。これが私たちがアカトンボと呼んでいるトンボである。このアカトンボという呼び方は、種の名前ではなく総称であり、これは通常アカネ属のトンボをさすという。どうやら少しややこしくなってきた。

次回は、第30・31回講座(9月27日・木) 講座名 果樹入門 講師 長江英子氏(ちば農業支援ネットワーク調査役) 会場 千葉中央観光農園

トップに戻る