第27回講座「天文学コミュニケーション入門」

講師 高梨直紘
開催場所 千葉市科学館
開催日時 2012年9月13日 午後

テーマは、「天文学コミュニケーション入門」
最先端の知見を学ぶ

 第26回講座(気象入門)が都合により11月1日に延期されたため、第26回講座に代り、午前は2007年にオープンした千葉市科学館のプラネタリウム施設など館内を参観する時間に当てられた。午後は、予定通りに第27回講座である「天文学入門」の講義が同科学館の教室にて行われた。

 千葉市自慢の星と映像を融合したハイブリットプラネタリウム(200名収容)にて、太陽系誕生の謎を探るため小惑星イトカワに向った探査機「はやぶさ」の地球帰還を振り返る映画「HAYABUSA」を観覧した。この日プラネタリウムを訪れたのはシニアと小学生の老少グループ。席を並べてプラネタリウムを見上げ、巨大な天井スクリーンに投影された迫力ある映像に息を呑みながら見入った。終了後、科学館のジオタウン。テクノタウン、ワンダータウンにある常設展示物を見学し、科学館のボランティアガイドの活動についての説明を聞いた。

プラネタリウムを見上げる

第27回講座「天文学コミュニケーション入門」
講師 高梨 直紘氏(東大生産技術研究所特任教授)
日時 9月13日(木)13:00~15:00 
場所 千葉市科学館きぼーる内科学工作室(千葉市)
内容 最先端の天文学の話題を聞き、受講生それぞれが宇宙観を醸成し、ここで学んだ天文学の魅力を他人に伝えることができることを狙いとする講義。

高梨 直紘講師冒頭の講座スライド
「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」

宇宙映画のタイトルに掲げられるような、魅力的で、刺激的なフレーズである。国立天文台広報普及員、ハワイ観測所研究員を経て、現東京大学生産技術研究書特任助教である高梨講師の冒頭は、こんな投げかけから始まった。氏は専門の研究だけでなく、天文学のおもしろさを伝えるために天文学普及プロジェクト「天プラ」を展開する気鋭の学者で、付け加えておくと千葉市出身でもある。宇宙の空間と時間を説明するために、パソコンにゲーム機で使用するコントローラを接続して画像を左右や上下に自在に操りながら、宇宙の空間と時間を再現し、人類が問い続けてきたこの難問に応える講義であった。人類の月面着陸以来のこの数十年で天文学は急速に進歩を遂げたとのことで、最先端の宇宙のことに聞き入った。講義の終了後は制限を設ける程質問が相次いで、すっかり宇宙の世界に魅了された2時間となった。

イトカワ探査機「はやぶさ」の地球帰還、火星探査機キュウリオンの火星着陸、国際宇宙ステーションでの日本人宇宙飛行士の活躍などが新聞等で報道され、つい最近では、250万光年離れた宇宙にあるアンドロメダ星雲(銀河)が、40億年後には太陽系のある銀河系と正面衝突するとの予測を米航空宇宙局(NASA)が発表するなど、様々な宇宙・天文関連のニュースがマスコミから提供される昨今である。こういうニュースに接してそれが何を意味するのかを理解する手掛かりになれば…、というのが、今日の講義の狙いであるとか。確かに、宇宙空間の無限性、時の感覚などは常識では理解しがたいことである。

幸いにも午前中に最新鋭のプラネタリウムで星座と宇宙で見たばかりであり、高梨講師の話に想像を膨らませながら聞き入った。137億光年というのが一つのキーワードと理解したが、筆者はこの方面に疎くとても全体の講義については描写することができない。レジメに記載された高梨氏の文章を引用させてもらうことで、講義の雰囲気だけでも書き留めておくことにした。

「137億光年彼方まで広がる宇宙の時空間全てを対象とする天文学は、我々がどこから来たのかを知る上で欠かせない知識を与えてくれるだろう。近年に入って続々とみつっている太陽系外惑星は、地球以外の天体における生命発見の可能性を現実のものへと近づけつつある。我々は何者かを知るチャンスが近づいているのだ。2011年度のノーベル物理学賞は、宇宙の膨張の発見に対して贈られた。我々の住む宇宙が今後どのようになっていくのかを、天文学者は解き明かしつつある。5000年に及ぶ天文学の歴史の中で、これほど急激に天文学が大躍進を遂げている時代はない。私たちは、天文学が急激にその地平を広げつつある幸運な時代に生まれ落ちているのだ。」(レジメから引用)



次回は、9月20日(木)の第28・29回講座 講座名 動物学入門 講師宮野伸也氏(県立中央博物館 自然誌・歴史研究部長兼動物学研究科長) 会場 千葉県立中央博物館

トップに戻る