第15回講座「宇宙論入門、第2の地球はあるか」

講師 高梨直紘
開催場所 千葉市科学館
開催日時 2013年12月11日

テーマは、
「宇宙論入門」と「第2の地球はあるか」

千葉市科学館にて

きぼーる通りを黄色に染めた銀杏ももう半分以上が落葉し、年の瀬が近いことを感じさせる。高梨直紘講師の天文学コミュニケーション講座は千葉市科学館を会場に行われた。宇宙の構造と成り立ちを語る「宇宙論」と系外惑星に関する「第2の地球はあるか」の二本立ての講義である。会場には聴講する科学館のボランティアスタッフの姿も。

 講義が始まる前は、スバル望遠鏡のあるハワイ観測所見学から帰ってこられた人たちの写真交換や土産話が飛び交う様子が教室のあちこちで見られた。和やかな雰囲気の中で始まった講義は午前から午後にかけての4時間に及ぶものだったが、講師の語る宇宙の話に釘付けにされ、時間の経過を忘れてしまう興味ある話にじっと聞き入った。

高梨 直紘講師テーマは宇宙論入門

第15回講座 「宇宙論入門」「第2の地球はあるか」
講師  高梨 直紘氏(東京大学生産技術研究所特任助教)
日時  12月11日(水)10:00~15:00
場所  千葉市科学館レクチャールーム

最新の宇宙研究の知見・惑星外生物の可能性は?

前回の講義では、太陽系の仲間、星の一生、銀河の世界などの話を聞いた。本日の講義は、宇宙全体を俯瞰し、その構造や成り立ちをさぐる宇宙論を紹介してもらうもの。午前の講義では、宇宙の始まりであるビッグバンについての解説や膨張し続ける宇宙空間とそれを動かすエネルギーの正体、星との空間距離を測定する方法などの話を聞くことができた。筆者などはビッグバンを表層的、断片的にしか理解していなかったし、この広い宇宙にある様々な星たちまでの距離をどのように測定しているのかについて思いを寄せることもなかっただけに、少ししだけではあるが体系的に学ぶことができてうれしかった。

午後からの第2の地球探査の話も聞き漏らせなかった。太陽系外の惑星探査についての講義である。この20年で日進月歩、急速に進んだ研究の一端を紹介してもらった。アストロバイオロジー(宇宙における生命)に関するもので、「私達はどこから来たのか」、「私達は宇宙で普遍の存在か」、「私達はどこへ行くか」をテーマに研究が進められているとか。現在の研究は、宇宙空間領域でハビタブルゾーン(生命居住可能領域)を探し出し、そこでの太陽系外惑星の生命の可能性などを追及するもの。

ハワイ旅行の写真交換や土産話が聞かれた会場。講師が入場され、これから講義が始まる。会場は科学館のレクチャールーム。外からも会場の様子が伺える。科学館のボランティアスタッフも聴講された。「宇宙論」講義の始まり。膨張する宇宙の距離はどのように測られるのかなど、宇宙の時間と空間に関する解説。
宇宙全体を俯瞰する講義。宇宙のことは理論モデルと観測による実証で明らかになる。超新星の観測を例に語られた。宇宙図。最新の研究や観測に基づく宇宙の姿を、私たち人間を中心に描いたもの。縦方向が「時間の流れ」を表し、横方向が「空間の広がり」を表す。宇宙図の見方。宙が誕生して138億年が経つ。空間は450億年まで広がっている。この図で宇宙背景輻射の領域が138億年間でどう膨張したかが判る。宇宙誕生直後からビッグバン直前の1秒に及ばない短い時間に、インフレーションと呼ばれる猛烈な加速膨張が起こった。ビッグバン。宇宙誕生直後の約3分間で、すべての物質のもと(元素)が生み出された。誕生から37万年後、「宇宙の晴れ上がり」が起こる。最初の星がいつ頃生まれたのかは正確には分かっていないが、ビッグバンから7億年後には銀河は宇宙に存在していたことが観測から分かっている。
宇宙の95%は未知の物質とエネルギーでできている。7割以上を占めるダークエネルギーが宇宙を膨張させている。宇宙の運命を決める式。お馴染みのアインシュタインが導いた一般相対理論である。時空の歪み+宇宙項=物質の分布で表される。1915-1916年発表。膨張する宇宙のことを発見したハッブル。1929年に発表。後退速度とその距離の研究から分かった。
膨張する宇宙のことを発見したハッブル。1929年に発表。後退速度とその距離の研究から分かった。Ia型超新星はピークの明るさが一定なので、銀河までの距離を測定する標準光源として用いられる。白色矮星が爆発した結果生じる。白色矮星。全ての恒星が超新星爆発を起こすのではない。比較的軽い恒星は、寿命がくると白色矮星となる芯だけ残し宇宙空間に広がっていく。
我々は宇宙で孤独な存在か? 系内だけでなく系外惑星も対象にして、第2の地球探しが始まっている。太陽以外の恒星の周りを回る惑星のことを太陽系外惑星(系外惑星)と呼ぶ。1995年に初めて発見され、1039個の惑星が発見されている。系外惑星探査は急速に発展している。2009年には太陽に似た恒星を巡る地球型惑星も発見された。
ハビタブルゾーン。液体の水が存在できる領域(ハビタブルゾーン)の探査が行われるようになった。トランジット法が地球型惑星探査に用いられるようになった。10万個の惑星を探査すると、3.5年後には1万分の1の精度で探査が可能とのこと。最後にきっちりとまとめてもらった宇宙論講義。

トップに戻る