第26回講座「気象入門」

講師 石井賢次
開催場所 千葉科学館
開催日時 2012年11月1日 午前

テーマは、「気象入門」
きぼーる(千葉市科学館工作室)にて

第26回講座「気象入門」
講師 石井 賢次氏(日本気象予報士会 気象予報士)
日時 11月1日(木)10:00~12:00 
場所 千葉市科学館科学工作室
内容 一年の天気の特徴を通して、四季の移り変わりのメカニズムや台風、大雨などに対する防災、減災に役立つ気象知識の基礎を学んだ。

石井 賢次講師講義風景

気象予報士の石井賢次講師による「気象入門」講座。中心のテーマは千葉県の天気の特徴。季節の変わり目には春一番、木枯らしなど独特の呼び名が付いた気象現象が起こるが、それらをキーワードに一年間の千葉県の気候の移り変わりについて解説された。身の回りの四季の変化と重ね合わせながら聞いた身近な話題は、一つ一つ頷くことばかりだった。後半は、雲の種類、気象現象、ことわざで気象を読み解く、物知り天気予報術を教わった。

石井賢次講師は、いすみ市在住の気象予報士。小中学生を対象にした授業を担当されることがあるが、シニア対象の講座は初めてとか。気象の知識は防災、減災に役立つものとご自身の家や地域の天気も引き合いに、千葉の天気の特徴を語られた。天気図の読み解き方などを期待していた方には少し物足らなかったが、天気予報の基礎になる知識を教えて頂き、天候の変化について自分なりに理解を深めることができた。「明後日は強い寒気が流れこんできます。だいぶ冷え込んでくるので備えを」との予報で、講義を締めくくられた。

気象予報士とはどんな資格かと思い気象庁のサイトを覗いてみたら、「防災情報と密接な関係を持つ気象情報が、不適切に流されることにより、社会に混乱を引き起こすことのないよう、気象庁から提供される数値予報資料等高度な予測データを、適切に利用できる技術者を確保することを目的として、創設されたもの」とあった。気象予報士制度は、気象業務法の改正によって平成6年度から導入されたもので、気象予報士となるためには気象予報士試験に合格し、気象庁長官の登録を受けることが必要となる。平成6年8月の第1回試験以来、平成24年1月までに37回の気象予報士試験が実施され、計8673名の合格者があったと説明されていた。

 テレビ等で毎日のように天気予報の情報に接し、気象の動きを知ることは生活していく上で必要な情報であり、又、台風や異常気象などの自然災害への備えとして必要とされる知識でもあり、気象に関する関心は高い。講義の後には少し長い質疑応答の時間が設けられた。ほとんどの質問は、正確な天気予報はどこまで可能なのか、観測データを収集する観測システムについて、アメダスと民間での観測との違いなど、天気予報の確率に関する事やこれからの予報に関する事柄などに集中し、気象に対する関心がどこにあるのかを窺い知った。

夏の天気図日本列島を覆う台風の雲

一年の天気の特徴(千葉県)
1月
 ・冬型の強い気圧:正月寒波、寒の入り(1月6日)、大寒(1月21日)
 ・冬日(最低気温が氷点下の日)、真冬日(最高気温も氷点下の日)
2月
 ・南岸低気圧:節分(2月3日)、立春(2月4日)、余寒
   *立春は、光の春といわれ、日差しは強いが気温が低い
   *大雪になることが多い
 ・春一番(関東地方の平年は2月26日)
   立春から春分の日までに吹く強い風南(風速8以上)。この低気圧が通り過ぎた後は、
  大陸から強い寒気がやってきて冬に逆戻りする。これを繰り返し春が訪れる。
 ・杉花粉症:立春を過ぎると植物の活動が始まる
 ・黄砂現象:大陸から低気圧が進み、春先(2~4月)に現れる
3月
 ・菜種梅雨:北東気流の影響 桜の開花予想春一番の天気図
 ・春二番、春三番、三寒四温
  *低気圧が通過し風がおさまった翌朝は、
濃い霧が発生する。
  ・春分の日(3月20日) 
4月                   
 ・桜の開花、春の訪れ、花冷え      
 ・田植え
 ・タケノコ梅雨:中旬から下旬にかけて
5月
 ・初夏:移動性高気圧におおわれる気象衛星から見た梅雨前線
 ・メイストーム: 日本海を発達した低気圧が通過し、暴風を伴った大荒れの天気
 ・寒の戻り(5月2日)立春から88日目
  *健康管理に注意が必要
 ・梅雨の走り 卯の花くたし(腐し)
  *五月晴れとぐずついた日も多くなる
6月(関東地方の平年は8日)                    
 ・梅雨の入り:太平洋高気圧とオホーツク海
   高気圧の境目に前線ができ停滞する
 ・梅雨寒:オホーツク海高気圧が強いと
   北東の冷たい気流が流れ込む。要健康管理
 ・梅雨の中休み
 ・夏至、五月雨、五月闇
7月
 ・集中豪雨、ゲリラ豪雨
  *湿舌が流れ込み、梅雨前線が刺激され局地的な大雨。災害に警戒
 ・梅雨明け(関東地方の梅雨明けの平年は7月21日)
 ・安定した夏空
  *梅雨明け10日。レジャーシーズンの始まり。
8月
 ・盛夏 夏日は最高気温25度C以上、真夏日は30度C以上、猛暑日は35度C以上
  *内陸部や北総、東葛地方で猛暑日がなっているのは、温暖化の影響か。
 ・大雷雨
  *上空の寒気と日射で暖められた空気が激しく対流し、積乱雲が発達する
 ・台風
 ・立秋(8月7日)
 ・稲刈り
9月
 ・残暑台風21号の衛星写真(2002年)勝浦で最大瞬間風速50.5m、銚子で52mを記録した。
 ・台風
 ・秋雨前線(秋霖)
 ・冬の便り
 ・運動会シーズン
 ・秋の花
   <台風の回数>
   2008年  22個
   2009年  22個
   2010年  14個
   2011年  21個
         
10月
 ・秋晴れ 北高型
 ・冬の便り 紅葉前線
 ・台風シーズンの終わり
11月
 ・小春日和
 ・木枯らし1号(平年は11月7日)
   東京・大阪のみ発表 1号のみ
 ・初霜 紅葉
 ・山茶花梅雨
12月
 ・遅い紅葉
 ・寒波
 ・初氷

平年とは、過去30年間データをベースに出した平均の年。10年毎の括りで平年を表す。
例えば、梅雨明けは平年で7月18日頃だが、一定ではない。
1900年代の梅雨明けは、7月18日、2000年代は7月20日、2010年代は7月20日。

◎天気予報の確率に関する講義及び質疑応答
・天気予報の確率は8割位か。100%はありえない。因みに、“かえるがなくと雨が降る”
“カラスが山に早く帰ると晴れる”とかの天気の言い習わしや、“朝焼けは雨、夕焼けは晴れ”、“飛行機雲が出ると雨になる”などのことわざの予報確率は3分の2位とか。動物は大気の流れを敏感に察知する能力をもっている。観天望気のことわざは、雲や気象現象で明日の天気を言い当てる。
・県内の予報は、銚子・木更津地方気象台、特別地域観測所(館山・勝浦)の他、13か所の地域観測所(アメダス)の観測施設で集められた気象データを基に、千葉北西部、北東部、南部の3地域及び市町村単位で発表されている。
・都府県レベルの気象現象を把握するため、気象庁はアメダス(地域気象観測システム)で観察を行っている。全国に1300個所設置されている。アメダスで観測するのは、気温、降水量、風向・風速、日照時間の観測データ。
・民間会社(ウエザーニュース社など)の予報は、スポットの気象情報についてボランティアから情報を得て作成されている。皆で作っている予報といえる。スポットについて、より正確な予報が得られる。
 
次回の講座は、
講座名:里海・里沼活用論
講師 :清宮 光雄氏(印旛沼漁業協同組合長)
     川津 浩二氏(千葉県水産総合研究センター 主席研究員)
     入江 光一郎氏(株式会社水辺環境研究所 代表取締役)
会場:漁業協同組合水産センター展示室及び印旛沼

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