渡り鳥と出会って知る、命、地域、地球、宇宙

講師 安西英明
開催場所 県立行徳野鳥観察舎及び鳥獣保護区
開催日時 2013年11月20日

「渡り鳥と出会って知る、命、地域、地球、宇宙(2)」
市川市行徳野鳥観察舎にて

 快晴の日が続いている。天高く秋空が広がり、野外観察には最適だ。今日のフィールドは、行徳にある野鳥観察舎と鳥獣保護区。この一帯は行徳近郊緑地特別保全地区に指定されている地で、千葉県の行徳鳥獣保護区と宮内庁新浜(しんはま)鴨場が隣接してある。新浜鴨場とは、皇室関連の行事のほか日本に駐在する外交官や賓客接遇の場に使われている猟場のことである。この緑地は水門で東京湾とつながっているが、内陸性湿地が広がる。その一角に千葉県の野鳥観察舎がある。ここは又、自然保護に立ち上がった市民運動の発祥の地だと教えてもらった。筆者も近くに住みながら初めて訪れたものだが、30数年前は三番瀬に面していた海辺であったはずで、すっかり変わっていた。

安西 英明講師ガイド役の野長瀬 雅樹氏

鳥と人とエコライフ

午前、安西英明講師から標題の講義を聞き、昭和51年に開設された3階建ての施設
から野鳥を30分程観察した。ここからは特別保全区に飛来してきた渡り鳥を身近に観察することができる。
話題が豊富で興味が尽きないのが安西講師の話。総論から各論へ、基礎の話から具体例と、変幻自在・話術巧みに聞く者の心をつかんで離さない。鳥の話が人のエコライフの話
へと展開していくのだが、話題が移る度に、“そうか”、“なるほど”と頷くことしきり。脱線しそうになるがすぐに本筋の話に戻っていく。講師が言わんとすることは、私たちは点としての野鳥ではなく、野生の命としてそれが生き延びようとしている場面に出会っている。そのことを知ってもらい、目に見えなくても命のつながりのことを理解してもらいたいということ。書き留めたメモ帖は直ぐに一杯になった。

午後からは、観察舎を運営している認定NPO法人行徳野鳥観察舎友の会の野長瀬雅樹氏の案内で、特別保護区の中を案内してもらった。干潟の方には水鳥が多く見られたが、保護区の林に入ると、姿は見えないけれどもいろいろな野鳥の声が聞えてきた。耳を澄ませると聞こえてくる鳴き声。その都度、“ヒヨ、ピーヨ”と鳴くのはヒヨドリ、“ギョギョ”はツグミ、“ピーピー”はジョウビダキと、ウグイスは“チャッチャッ”。“ホーホケキョ”は鳴き声でなく、オスのさえずりですよと講師からのコメント。

観察舎の2階・3階に行くと、保護区の鳥たちをよく観察することができる。観察舎に前の堤と水辺にはエサを求めてカモメなど多くの鳥が来ていた。鳥のこと、鳥と人との係わりなど安西節の講義が始まる。聴衆の心をつかむのが上手な講師である。

紙芝居も用意されていた。”自然のすばらしさだけでなく、厳しさのことも知る。それが自然を理解することです。”物差し鳥。鳥の大きさを測るのに便利な基準になる鳥のことを言う。カラス、鳩、ヒヨドリ、雀が大きさの基準となる。観察舎の脇の水辺で餌をやる人がいた。カモメが群がり、カルガモの雌、雄が仲良くやってきていた。

観察舎の2階から保護区にやってくる水鳥を観察。カワウなどはそのまま越冬するという。1日50種の鳥がやってくるとか。淡水域にいる水鳥には、鴨類、アイザ類、カイツブリ類、カモメ類がいる。日光浴をするカモメたち。カワウも交じっていた。よく見ると、アオサギの姿も見かけた。

この地にやってくる冬の水鳥水辺で水浴びをするカルガモ。派手な色をしているので雄か?雌は茶色の地味な色なので区別がつくというが…。千葉県行徳野鳥観察舎の入り口。市民の自然保護活動を行っているNPOが運営に参画し、活躍している。

観察舎の3階から保護区を見渡す。水辺の奥には東京湾の高速道路が走り、その先は三番瀬の海。水辺に羽を休める水鳥。冬になると緑地にはオオタカ、ノスリ、チュウヒなども訪れる。生き物との共生が理念。その考えに基づき設立された野鳥病院。年間400から500羽が持ち込まれ、4割が自然に戻るとか。ゲートの中でリハビリ中の傷病鳥たちが、野生復帰を待っていた。

常時179-180羽の鳥がリハビリ中とか。この日は傷が治ったアカハラが放鳥されることになり、その瞬間を目撃した。鳥は元気に羽ばたき飛んでいった。特別保護区に入り、案内してもらう野長瀬ガイドの説明を聞く

銀杏の実が散らかる狸の糞を発見保護区の鳥たちを観察するガイドの説明に耳を傾ける

水辺のマガモのつがい赤く色づいたトベラの実。鳥の好物か去年の実が赤く色づくシロダモの木

水辺に居たアオサギとダイサギ餌を探すアオサギ地面に穴を開け棲むクロベンケイカニ

見かけた野生の狸

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