里山里海の自然と人の生業

講師 北澤哲弥
開催場所 塚本ビル
開催日時 2013年4月26日

テーマ:里山里海の自然と人の生業
講師:北澤 哲弥氏(江戸川大学非常勤講師)
日時:4月26日(金)10:00~15:00
会場:千葉市内塚本ビル8階会議室

<本科に続いて専攻科でも>
今年度専科の初回講座はパワーポイントを駆使して、午前中に①里山の生物多様性、②人間による管理と植物の多様性、午後に③里山の変貌-鳥獣害を事例に-、④里山の生物モニタリング調査、の講義が行われた。まずは、昨年の本科での講義の復習も兼ねて、地球上そして日本の陸地と海洋における生物の生息・生育数、さらに狭い国土に多様な生物相を見せ、世界の生物多様性の「ホットスポット」のひとつである日本の紹介で始まった。

<日本は里山の国>
里山、里山とよく言われるが、フィンランドに次ぐ森の国・日本、ただしその自然林は17.9%と少なく、二次林・植林が48.7%、それに二次草原・農耕地が26.5%であるというデータが示されて、その所以に得心した。いよいよ里山が、里山を構成する二次林(雑木林)、草原、氾濫原の状況およびそこにいかに多くの生物たちが生息・生育しているかが多面的かつ微細に説明された。

<自然と人間との葛藤?>
一転してテーマは「人間による管理と植物の多様性」。私たちが郊外や田舎の其処此処に見る造成地・畑・耕作放棄地・雑木林における植物群落の移り変わりがいかに進むか実に説得力のある説明がなされた。一見静寂極まる自然の風景の中で、植物たちが妙なる適応力を持って戦い、生き残り、繁茂していく、激しく動的な世界がそこにあることが分かった。

身近な植物:セイタカアワダチソウ、ススキ、カタバミ、ハルシオン、クズなどが事例として挙げられて、それらが持つ植生が紹介されるに及んで、一同の興味はますます深まっていった。どこにでも見る畑や田圃道の轍、踏み跡、その脇、で植物が見事に住み分けて芽吹き育っている。草刈りをするにも、植物が持っている特性を見定めて行うことがいかに効果的かがよく分かる。

<鳥獣害を事例にした里山の変貌>
森林・伐採跡地・畑に見られる鳥獣害の被害が1980年代後半以降急激に増加した実態と原因が説明された。一見シカやイノシシの数が増えたことのように思えるが、耕作放棄地や管理不足の森林の存在がさらに拍車をかけていることなど、やはり人間社会における時代変化に誘引されていることが分かった。

<次回次々回はいよいよ調査実習へ>
最後は、この先2回続く「里山の生物調査実習」の手順の説明を受け、興味津々。千葉市北端の里山で草地と森林において生物モニタリング調査の実習をどう行うか、未知への取り組みにますます期待が募る。

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