第8・9回講座「植物学入門」

講師 古木達郎氏(千葉県中央博物館主席研究員兼植物学研究科長)
開催場所 千葉県立中央博物館教室
開催日時 2012年5月10日

本日の講座は、古木達郎講師による「植物学入門」の連続講義(午前・午後)。前回に引き続き中央博物館講堂で行われ、コケ研究が専門という古木氏の講座は、午前中の座学(植物とは何か)と午後からの体験プログラム(標本からその学名を調べてみる)で構成される参加型の講義であった。
座学では、テーマである「植物とは何か」について、生態的な見方から、細胞からアプローチする系統的な見方に変ってきているという、植物と他の生き物を分ける分類の考え方を解説された。ともすれば単調になりがちな植物の解説や生物の名前の付け方などに関して、受講生と問答を繰り返しながら講義が進められたので、一つ一つ理解しながら聴くことができ、飽きずに耳を傾けた。
秩父で採取されたという6種類の楓の標本からその学名を調べるという午後からの体験プログラムは、実際に参加してみると、図鑑に掲載されている楓の種類が多く、同じように見える標本の楓から合致するものを特定していく作業に、予定の1時間があっという間に過ぎてしまった。正解に至るまでの難作業?に多くのグループから、“こんなに多くの種類があるとは!”というつぶやきの声が洩れ聞こえた。植物を学習するための図鑑や標本の取扱いについても教えてもらった。

「植物とは何か?」を理解する上で、動物や菌類と分類して考えるという方法がある。これまで、動く生物である動物界と動かない生物である植物界、更に菌類との違いでそれぞれ分類されてきた。 1800年代、顕微鏡の発達により細菌や微細な生き物(原生生物)が確認され、「動物界」「植物界」という最上階層の分類体系に、「原生生物界」が組み込まれて、生物3界説が確立し、更に「原生生物」とは核の構造が違う「モネラ」(核膜を持たない原核生物)という生き物がいることがその後分かり、1900年代半ば、核に膜をもつ真核生物(動物、植物、原生生物)と、核に膜のない原核生物(モネラと呼ぶ)という分類が定着していく。
この辺までは学校で教わった記憶があるが、近年の5界説以降の学説となるとこれは新しい知識となる。言葉や概念は断片的に耳にしたことはあるが、この講座で包括的な解説を聞く機会を得ることになり、これから知識を整理する上で大いに参考になった。 真核生物という言葉も、「病虫害入門」の講座でも紹介されたが、この講座でその意味がやっとつかめた。
近年、電子顕微鏡の発達により細胞の構造が観察できるようになり、その結果、「生物共生進化説」が提唱され、藻類が更に細かく分けられるようになる。どの祖先から分かれたかという生き物の階層付けは、最近は、分子(遺伝子)の解析によって行われているとのことであった。

講座の終わりに、古木講師から中央博物館の「市民研究員」制度の紹介と活用の呼びかけがあり、事務局からは夏休みの千葉自然学校の「平成24年度ボランティアスタッフ募集」のチラシが配布された。

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